tetorapackさん

洗練された「恋愛への情念」の質感」

「四谷怪談」「番長皿屋敷」とともに日本三大怪談と称せられる「牡丹灯籠」。
その最大の特徴は、他の二作が深い恨みの内に死んだ者の怨念を幽霊と化した姿を通して描いているのに対し、
この牡丹灯籠は幽霊と人間との「恋愛の情念」を主軸に描き出している点だろう。


そうした視座からすれば、キンダースペースの今回の「新・牡丹灯籠」 は見事なまでの質感で「恋愛の情念」を表現した秀作といえる。

その質感とは、脚本、演出はもちろん、衣装、舞台セット、音楽までも含めた総合芸術としての「演劇」として、
そうした要素の調和という意味からの「和」と、日本独特の色合いを強く感じさせるという意味からの「和」という、
二重の「和」の素晴らしさであり、その魅力に最後まで吸引され続けた。

シアターXを埋めた満席の観客は、私を含め熟年の世代が少なくない。
こうした世代も安心して質の高い芝居を楽しめるのがキンダースペースの大きな魅力だ。


 これは、もちろん役者の演技力がなければ感じられないものだが、今回も出演陣の技量は秀逸だった。
特に、お峰役の瀬田ひろ美、お国役の古木杏子、お米・お芳役の小林元香といった女優陣から放たれる「恋愛への情念」ぶりは流石。
男優陣では、伴蔵役の白州本樹(スターダス・21)、飯島平左衛門役の伊藤勉(劇団文化座)の客演組の好演が印象に残った。




Rezerさん

「心のある作品」

花道から続く情緒あるセットに、恋、愛、情が絡み合う、とても素敵な作品でした。年配の方も、楽しめる作品です。そして、脚本や演出を学んでいる若手の方にも、是非見て頂きたい作品と、思いました。次回作も、絶対、観たいです。


恥ずかしながら、『牡丹灯籠』の物語、なんとなくしか知らなかったのだが、構成・脚本・演出の原田一樹さんのお言葉通り、人を強く惹き付ける物語だと、痛感しました。
愛の威力や因縁、自分の力だけでは、どうにもならない。
生きるという事が愛故に、自ら引き寄せてしまう因果応報。
恋しいが故に、罪を犯し
罪を隠すのは、愛があるから
愛があるから、許せない。
許されないから、情けを求め、
情けがあるから、生きていける。
だからこそ、生や愛に執着してしまうのかしら?と思いました。あらすじは、書いてありますが、、、感想です。

露(大桑茜さん)は、萩原(有本孝浩さん)を恋しくて、幽霊になってまでも会いたいと思うのに、幽霊であることを隠した露を裏切りと思う萩原。露の使用人お米(白沢靖子さん)は、露の思いを果たす事で、自分の生きた証しを残すが如くで、この三人(ダブルキャストで、牡丹)の切なさには、場内すすり泣きでした。

露の思いを協力する報酬として百両を請求する、伴蔵(白洲本樹さん)お峰(瀬田ひろ美さん)夫婦だが、それも、なんとか夫に一旗揚げさせたい妻の愛。この夫婦、貧乏ながらも、心の繋がった感じが良かったです。

その百両は、露が勘当同然にされた父・飯島平左衛門(伊藤勉さん)の元から露が、用立てていた。露がいないのをいいことに、その家督を狙う計略を立てる内縁の妻、お国(古木杏子さん)には、情人の源次郎(森下高志さん)がいる。それを見抜いた、忠誠心の強い奉公人の孝助(清水拓也さん)が、阻止しようとするのだが、平左衛門を刺すという意外な悲劇に、なってしまう。孝助は気付いてなかったが、平左衛門は孝助の親の敵であったので、自ら敵として刺す場を与え、孝介の逃げ道を作っていた平左衛門であった。この情けにも、涙の場内でした。
痛手を受けた平左衛門と使用人のお竹(深町麻子さん)まで殺してしまう、お国と源次郎、罪と深手を負い逃避行を重ねる内に、この二人の愛と執着は、狂気を滲み出していた。

露からの百両を元手に、金物屋を成功させた伴蔵だが、後悔の念を消すかの如く、置屋通いの毎日で惚れて貢ぐ女が、源次郎のために働くお国。お国の妹分お梅(深町麻子さん)は、お竹の実の妹だったりと、じわじわと恐怖が忍び寄り、単純な私は緊張してしまいました。それが、日本の怪談の魅力と、今は思えますが。。。
お国の存在を知ったお峰の、伴蔵への愛憎のつらあて、それでも伴蔵・お峰夫婦の愛(これまた、素敵でした)で、乗り越えられると思いきや、伴蔵のお峰殺し・・・そんな、切なすぎる・・・でも、夢だった!と、救いのある見事なラストでした。

情念が紡ぐ物語を、力量のある役者さんが演じるので、怪談に弱い私には、やや怖い感があったのだが、三遊亭圓朝役の語り手が三人加わることで、重さを深みに変えて、テンポも加わり、とても良かったです。この語り手(平野雄一郎さん、滝本志優さん、花ケ前浩一さん)が、それぞれの個性で、落語家らしくありつつ、役者さんにしか出せない味を、堪能させてくれます。

花道のある情緒あるセットに、開演前から、響く、風鈴の音と思ったが、止静?(修行僧がよく持っている、小さな鐘)の音。右手前に二輪の赤い彼岸花。この空間だけで、期待が高まり、納得の作品でした。

一見、グレー系こげ茶の壁だが、ライトにより、壁が透けて向こう側が見えるのだが、旗本の庭だったり、お墓だったりと、情景の移り変わりに、奥行きが加わり、とても良かったです。

少し高低差のある二間で、物語が進むのだが、障子、襖、雨戸と変わるのも、良かった。




ラスカルさん

「大人の芝居」

これは大人の芝居でした。 派手さは無いですが、落ち着いてみれましたね。 平日の昼間というのに客席はほぼ満席! 初見でしたが、芝居をみれば人気の高さも分かります。 次回公演もみたいです。




くりさん

初見でしたが

凄い・・純粋にうまいと思い、勉強になりました。落ち着いた芝居のなかでしっかりと作品の魅力を引き出し、最初から最後まで引き込まれる感覚になりました。また見たいと思います。