PEARさん

キンダースペース版「金色夜叉」を観た

 キンダーの巧みな複合舞台構成には今回は絶対にだまされないぞ、という決意がまたしても泡のように消えた

 非常に緻密に、濃厚に織られた機織りの工程を見る想い

 デジタルな時代にはこんなこと不可能だろう、とさえ思える時間の流れ方、登場人物の中で個々の身に起こったことへの対処の仕方
 現実と妄想の対比で、観る者が登場人物を通して「人」という生き物のどうにも明確に説明のしようのない、解釈の選択の幅が広がるような見せ方が原田氏の演出によって施されている

 宮と寛一と満枝の感情の絡まりやもつれは、観客が好むと好まざるに関わらず時に粘着質的に時間がピタッと停止して、ぐいっと観る者の心になにかを残していくのである

 原作を読まないので多くを語れないような気もするが、熱海の夜に止まってしまった寛一の時計の針がねじ巻き式だったとしたら、そのキーを握っているのは、本当のところ誰なのか観る者一人一人によって答えが違うのは演劇という魔法だろうなという感想を持った

 この舞台がすごいなと感じさせるのは、時間がたてばたつほど心に迫ってくるものがあるということ
 体中からエンリッチな香りを残すほどの役者の集中力、それはとりもなおさず演出の意図を全身全霊で理解し、自分自身との格闘の日々を積みあげる演じる人々の魂なのかもしれない




もっちさん

こんなに深い物語だったのか
タイトルだけで俗っぽさの塊のようなイメージをもっていたのだが、実は何も知らなかったのだと思い知らされた。 キンダースペース版とあるので、もしかすると原作とはかなり違うのかもしれないが、個々の描き方の細やかさ、それに応える役者さんたちの素晴らしい演技に、驚きのような思いをもって舞台を観ていた。 (肝心なところでの台詞のカミは残念!) 時代は明治でも、描いているのは人間の普遍・・・と思ったのだが、もしかすると作家は、現代の我々だからこそ共感できる物語に作り変えたのかもしれない。 登場人物の心の揺れを追いかけていくうちに、これは時代背景を借りた「現代版・金色夜叉」であるという気がしてきた。 いずれにせよ、非常に完成度の高い、楽しめる舞台となっている。





やまさん

残席貴重
現代演劇の素晴らしさが凝縮。とにかく本がよくて、文学作品らしさを尊重しながら、いま新たに戯曲化された言葉と構成の素晴らしさ。として俳優や美術も魅力的で惹きつけられる舞台でした。





Rezarさん

情緒深く、とても良かったです。
『金色夜叉』原作尾崎紅葉の病死により、未完のまま遺作となっているそう。あの熱海での有名すぎる別れのシーン後、貫一が高利貸しと言う生き方をしたという位の記憶しかない私なので、どの程度の脚色なのか解らないが、原田一樹さんの構成・脚本・演出は素晴らしいと思いました。花道のある舞台美術や役者さん達も、とても魅力的でした。夢があるからの葛藤と言うより、現実を知る故の葛藤の描き方も、大人向けで見応えあり、無常の世でも、情を信じたいと思ってしまいました。

いろんな場所を見せる為の、紗幕や光使い、雨音・風等の自然音の効果も、とても良かったです。
衣装・小道具等のこだわりも素敵で、その時代空間らしい家具等も、シンプルだが、とても活きてました。

達者な役者さんばかりでした。
貫一役(米山実さん)の想いも、伝わってくるものも多く、良かったです。
赤樫満枝役(瀬田ひろ美さん)の女の切なさ、愛や優しさは、見事でした。

やはり、見続けたい劇団さんです。




ツイッターから

・キンダースペースの「金色夜叉」を観てきました。満枝がとても凛々しく描かれていたのが印象に残りました。熱海のシーンよりも、貫一、満枝、お宮の三人のシーンが好き。満枝の「貴方の覚悟はその程度なのです」という言葉が胸に刺さりました。


・キンダースペース観劇終了。4000円のチケット代が安いと感じるほどの素晴らしい芝居。これでもかというほどの人間のエゴ、エゴ、エゴÖ


・両国・シアターΧにて尾崎紅葉「金色夜叉」を観る 劇団キンダースペース版 未完にして傑作という本邦文学の至宝を明快に語り尽す 複層的ないくつもの筋が輻輳的に混沌し やがて鮮やかに分岐したふたつの結末へと導かれる あしたまでしかやってない これは観るべき
ちなみにこの劇団キンダースペースは持ち小屋として西川口のちいさなアトリエで公演していたと思う 以前志賀直哉「暗夜行路」を今回も出演した西村剛士君の声掛けで拝観した 明治・大正期の文学作品を取り上げることが多いようだが その方面に興味のある方にはとくに推薦させていただきたい


・両国シアターXで、劇団キンダースペースさんの「金色夜叉」観劇。面白かった。転換の手法が、巧みで流れるような展開。(一緒に観た父は、巧み過ぎて若干混乱してたけどw)舞台美術も、すごく綺麗で洒落ていたな。休憩無しだったけど、最後まで、集中して観られました。


・シアターXにてキンダースペース公演「金色夜叉」観てきた。劇団にお世話になって何年もたつのに、本公演観たの初めてだ!2時間越えの芝居だったけど、最後まで集中して観られた。


・今日は両国のシアターXにてキンダースペース公演「金色夜叉」を観に行ってきた。さっき見終わったばかりだけど、最後の終わり方がウルウルした。お宮さんは一体何が不安だったんだろうかÖ。


・村信さんが舞監をやってらっしゃるキンダースペース「金色夜叉」わず。 やっぱり、狂女って美しい。 シーン一つ一つがとても綺麗でした。


・初キンダースペース尾崎紅葉「金色夜叉」当パンで知ったけど未完だけに色んな解釈が元々あるんですね。ひじょーに見応えありました。シアターXで日曜まで。


劇団キンダースペースの「金色夜叉」を見た...熱海の海岸のシーンに期待したのだが...
案外あっさりwww..
しかし、こういう忘れ去られそうな名作にスポットをあてる原田一樹は...やっぱり鬼才...
今後にますます期待です...


貫一お宮像見てきた。キンダースペースの『金色夜叉』はやはり面白かったんだ。本はやっと一部(熱海まで)を読み終えたところ。





アンケートより


すばらしかったです。息を飲み続けて終わりました。



皆さんの熱演に劇場にいるということを忘れてすっかり物語に引込まれておりました。
毎々、原田氏の説得力ある脚本に驚き入っております。今回も読みの深さを楽しみました。


現代にも通じるテーマをどう演じられるのか楽しみでした。すごい展開にドキドキしました。
瀬田さんははまり役でしたね。さすがと思いました。
脚本も演出も好展開で時間を忘れました。これからもご活躍を祈ります。


意外な展開で感動しました。尾崎紅葉が言いたかったことと視点を変えて、考えさせられました。力作でした。



2時間を超える舞台でしたが、テンポ良く飽きずに観させて頂きました。
女の業が宮なら、自立し前を見ているのが赤樫夫人でしょうか?


■寄せられた感想より



・oliveさん

こんな機会←(キンダースペース公演)でもなければ読まなかったであろう「金色夜叉」
脚本、演出家の手にかかると、本とは違った風景の中に誘われ、想いもしなかったラストシーンによって、
始まりはここか?悲劇は夢がみさせた妄想か?時代は変われど、人の生き様、考え方、あまり変わらないな、
な~んて諸々考えさせられた芝居でありました。
原田氏の捻り技、凄い!です。

また、憎まれ役だと思われてる赤樫満枝を演じた瀬田さん、
自立した女性の強さばかりでなく弱さ、可愛らしさ、観る側を頷かせる演技、素晴らしかった。


・Oさん

先日は素晴らしい舞台、ありがとうございました。
連日の大入りだったようですね。今の時代だからこそ、深い作品が求められているのかもしれませんね。本が出来て時間がない中で、しっかり仕上げてくるのも歴史のある劇団だからなのですね。今後も応援していきます。お疲れ様でございました。


・Yさん


『金色夜叉』
この公演に先駆けて去年図書館で借りて読んでみたのですが

延長したにもかかわらず文体に馴染むのに時間が掛かり過ぎて?結局最後まで読み切る事ができずにいました。とほほ。
それでも私にとっての最大のポイントお宮はなぜ貫一を捨てて富山の元へ嫁いだのか という点に関して何も記述がなかった事だけは確認が取れたのでよしとしました。(^^ゞ
そしてこの舞台ではどのように描かれているのか興味を持って観劇に臨みました。
最後まで観終わっての余韻の中でそのお宮の心の動きが少しわかった気がしました。
お宮の目を眩ませた「ダイヤモンド」が富山の指に煌くそのものズバリではなく富山の住むきらびやかな世界、あるいは富山自身の放つオーラだったんだな、と頭じゃなくて心で感じました。
なんて、そんなこと今更言ってんの?って感じですがじつはずっとこの話を「愛かお金か」っていう話だと思っていたのであまり共感を得る事が出来ずにいたのです。
でも今回、お宮の娘らしい、妄想に揺れ動く乙女心的な部分を感じて面白かったです。
真面目な女の子がチャラ男にうっかり恋しちゃう、みたいな?なんてもう、ほんと喩えが下世話ですみません。(~_~;)
それと特に胸を打たれたのが貫一が高利貸しの手代となってバリバリやっているところに旧友が尋ねてくるシーン。
昔の誼で借金をどうにかしてもらおうと情に訴える旧友達に対して毅然とした態度で断わる貫一。
そしてそれを恨みに思わず「俺が悪かった」と謝る友人。たぶん当時の高利貸しっていうと今想像するよりももっと?社会的に偏見を持たれていた職業だと思うのですがその職業にあれだけ誇り持っているところが凄い。
でもそれがお宮に振られた恨みのみからきているとしたらすごくコワイですね。お宮が離れていくのも無理ないかもって気もしなくもない。
というくらい貫一さんに迫力がありました。迫力と言えば、貫一と赤樫満枝とお宮のシーン。
女の意地がぶつかりあってゾクゾクしました。
あのシーンがあってのラストの貫一とお宮のみかんのシーンで結局また「なんでお宮は富山の元へ?」って事になって胸がぐわわわぐわわわとしたまま終わるという感じがほんとに良かったです。
この胸がぐわわわする感じはそう滅多に味わえるものではないのですが
原田さんの作品では必ず出会えるというのがまた凄いところです。
新年最初の公演でとてもよいものを観せていただきました。
ありがとうございました。
皆様お疲れさまでした。



・Sさん

2時間を超える長編で、重厚感のある舞台になったなあと思いました。
明治の時代の学生達のやり取りや有名な熱海の場面など、印象よりは実直な雰囲気で再現され
序盤中盤は、時折暴れるキャラクターがありながら、やや淡々としたムードで進みますが
終盤は一気に加速して、男女の情念のからみが劇的に立体的に描かれ
特に主要3役がにらみ合う場面などは、演劇の醍醐味を味わいグッときました。

座組としては、客演の方々の納まりがとても良くて、また劇団員も着実に役割をこなしていると感じました。
大桑さんの頑張りも伝わってきましたし、森下君も新境地を開いた感じがします。
深町さんは変わらずいい味が出ていました。
そして、瀬田さんはまあ流石ですね。登場や身振りで空気を変えるところに見惚れました。
まだまだありますが、とにかく他の舞台ではなかなか味わえない独特の重みあるドラマ感なので
また今後も楽しみになりました。