劇団キンダースペース レパートリーシアターVol.18

短編演劇アンソロジー
anthology
作・演出/原田一樹

 文学には短編というジャンルがある。これは、単に文章の短さをいうのではない。その短さを武器として、割れた鏡がたとえ断片であれ複雑な全体をうつしこむように、世界に対応しようという試みであると理解している。事実、すぐれた短編小説は、その行間と読了の瞬間から迫ってくるものの手触りを確かめるため二度三度と読み返す衝動を抑えがたくするものがある。
 一方で「リアリズム」演劇というものは、基本的に短編なのだとも思う。長編小説の読了には数日を費やすのに比して一つの演劇はせいぜい一晩で終わる、という理由が全てではない。演劇の舞台に置かれるものは、実体であるがゆえに逆に抽象化、象徴化に向かわざるをえないものだし、俳優の存在の価値というものも劇場の外の世界との拮抗によって量られざるをえないものだからである。リアルであるということはそう言うことで、その一方で舞台はなにもない空間に向かう。つまり全体との対応の仕方に同じものがあるのである。
 今回、あえて短編演劇と銘打つのは、その方法をより鮮明にし一つの鏡の断片を作り出そうという試みである。
             

作・演出家 原田一樹