キンダースペースは十年前より『モノドラマ』という形式で、わが国の近代小説を多く舞台化、上演してまいりました。これは主に裸舞台に近い装置で、一人の俳優が、朗読でも一人芝居の形でもなく、地の文も含めた語りと演技でそこに小説世界を作る、というものですが、現在は三十本以上のレパートリーを持ち、熊本県立劇場のような大きな舞台から、小さな土蔵までどのような空間条件にも対応できるものとして、劇団の財産となっています。

 今回の短篇演劇アンソロジーはこの形を踏襲し、さらに数人の俳優によって一つの小説を舞台化するものです。

 わが国の近代小説の掘り起こしは、21世紀を迎え、文化についてもグローバリズムの波が席巻する中で、独自の文化の在り方について深く考える機会を与えてくれます。我々は勿論、これらの作品を演劇的に構築していくものですが、作品の底辺へのアプローチ、想像力の持ち方は変わるものではありません。

「南京のキリスト」「アグニの神」ともに中国文学の影響の元で、芥川の独自の世界が展開しています。我々は、たしかにこういったものに心を動かされる感性を、おそらく他の文化圏、他の民族の誰よりも共有しているのです。これをモノドラマ同様シリーズ化することで、新たな上演形態を定着したいと考えています。

 この短篇演劇という形は、これまで演劇界で特に規定されていたものではありません。これを、一本が六十分以内、登場人物を五人以内と限定することで、逆に演出的な可能性を探るとともに、新たな作家と俳優の才能を場とすることも考えています。

構成・演出 原田一樹