『架空線は相変わらず鋭い火花を放っていた。彼は人生を見渡しても、何も特にほしいものはなかった。が、この紫色の火花だけは、凄まじい空中の火花だけは、命と取り替えても捕まえたかった』
 ペン先の架空と、三十五歳で自ら命を絶たねばならない実存。我々がひきつけられるのは、芥川という作家のこの振れ幅です。
 彼にとっての人生の耐えがたさは、創作への衝動と引き換えるほどのものであったのか、それとも……
 この文学者の作品を考えることは、日本人にとっての芸術を考えることに他なりません。