レパートリーシアターVol.22
短編演劇アンソロジー 伍〈近代作家シリーズ〉 小泉八雲篇
【死の微笑】
和解 雪おんな より

短編演劇アンソロジーにおいて近代文学を取り上げる作業の意味の一つは、日本人である私達自身の姿と言うものを、近代の地平からもう一度見つめなおすことです。

例えば、小泉八雲が他者として深い謎を感じた、死に臨んでさえ顔に浮かび上がる

「日本人の微笑」。これは、今の私たちにどのように残る感性なのでしょうか?

そして、いまひとつ重要なことは、何よりも文学の舞台化が、私たちに演劇の本質といったものを教えるという事に他なりません。

「雪おんな」や「和解」の武士に俳優が身体を与える、その作業はどう行われるべきか。恐らくここに、演劇と言うものの根本的なあり方が潜んでいるのです。

構成・演出 原田一樹

 好評の短編演劇アンソロジーシリーズ第5弾!
 わが国の近代文学を取り上げ、日本的なる物、日本人に固有の心象や心情に焦点を当てて舞台化する事を目的とするアンソロジーで、今回、「怪談」で名高い 小泉八雲 を取り上げます。
 小泉八雲は周知のように本名をラフカディオ・ハーンといい、アイルランド人の父親とギリシャ人の母親の間に生まれ、両親の離婚までダブリンで暮らしていました。
 日本に定住したのは明治二十三年以降であり、松江中学の英語教師となって、以来、出雲その他、日本古来の姿をとどめている土地を廻って、西洋の合理性と対比させた日本人の魂のあり方に着目して様々な著作を残しました。
 代表的な評論である「日本人の微笑」は、イギリス人たちが、死に直面してもなお微笑んでいる日本人の不可思議さを指摘したことに対して書かれています。
 今回のアンソロジーでは、西洋の目を持って日本を見つめた小泉八雲自身の姿も舞台に登場させ、彼の言葉と作品を、同時に舞台化します。
 脚本に新進女優 畝本奈美 を大抜擢。若い感性で書き上げた戯曲を、ベテラン演出家 原田一樹が見事に舞台の上に花開かせます。
 出演は 瀬田ひろ美・平野雄一郎 等お馴染みの面々がアンソロジーならではの 語り と 数人の役柄を演じて八面六臂の大活躍!
 どうぞ、秋のひととき「私たちの怪談」をお楽しみください。

劇団キンダースペース 制作部