原田一樹のこの処女作は、巧みな構成力と科白術で、彼の、問題意識に見事な説得力を持たせていた。劇場が世界に連なった秀作である。
狼を退治した後のブーフーウーそれぞれの立場を、硬直していく革命思想と重ね合わせ、さらにおとぎ話が持っている残酷さを醸し出したこの作品は、小品ながら、時代を代表する作品になっている。「逃げ去る恋」でも注目した、村信保が、人間のひ弱さを見せるフーを好演。
童話シーンと革命家シーンが、実に有機的に小気味よく交互に演じられている。童話の単純な強さが、革命家の純粋な直接的な心情に真っ直ぐに繋がり、小さな舞台が強度に満ちた空間に変貌する。狼を殺した後には「退屈」が襲って来る。「退屈」を標的にして「革命・革命家」というコトバに、この芝居は内容を与え蘇らせた。