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志賀直哉 |
立ち食いのすし屋で、手持ちの銭が足りず恥をかいた秤屋の小僧。たまたま秤を買いに来た客がその様子を見て、小僧をすし屋に連れて行く。それは店の番頭たちの噂していたすし屋の名店であった。小僧は男を神様ではないのかと思う。 短編の名手として知られ、『暗夜行路』を代表作とする、志賀直哉の作品。 |
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菊池寛 |
元禄、京歌舞伎の坂田藤十郎は、傾城買い(けいせいがい)の芸の名人として知られていたが、江戸から上った中村七三郎が真を映す芸風によって人気をさらうと、自らの芸の行き詰まりを感じはじめた。七三郎に対抗、近松門左の筆になる密夫(みそかお)の狂言を打つ事となるのだが、人妻を寝取る演技に苦心する。顔つなぎの宴を抜け出した藤十郎は、貞淑の噂高いこの茶屋の女将お梶と、離れで二人きりとなる。 純文学の中で大衆的傾向の作品も物した菊池寛大正8年の作品。 |
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芥川龍之介 |
香港でインド魔術を使う老婆が、惠蓮(エレン)という少女の体にアグニの神を乗り移らせて予言をさせている。惠蓮は実はさらわれた日本領事の娘妙子ではないかと疑う探偵の遠藤は手紙を拾う。手紙には、妙子の筆跡で、今夜意識を失う前にアグニの神になりすまし、自分を返さなければ老婆の命を奪うと予言するので迎えにきてほしいと書かれている。遠藤は夜を徹し老婆の部屋のドアの外に張り込む。やがて、部屋のなかからは、アグニの神の声が響いてくる。 技巧派芥川龍之介の一遍。 |
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太宰治 |
全てを菊作りにかけ、生活も金銭もかえりみない男、才之介。あるとき才之介は、菊について詳しい不思議な姉弟と知り合う。隣に家を構え、天下一と自負していた自分より菊造りにたけるその弟と姉は、いずれ作った菊を売り始め、家は次第に立派なものになって行く。菊を売ることを拒み清貧を貫く才之介。だがある日、姉が才之介の貧しい家を訪ね、自分を嫁にもらってくれと申し出る。 太宰治が、作家であるということの姿勢を投影させた『聊斎志異』を原典とする作品。 |
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【劇団NLT】 |