※毎年拝見しているのですが、今回はまた一段と凄かった・・・
何がって・・・観てくださいよ!!
理想(正義)と嘘(現実)を突きつけられて、考えさせられて、唸ったよ!
本当に是非とも観劇超お勧めです☆
それから私と語りましょう
☆最高に大好きな応援している劇団なんです

※大きな拍手を送ります。いい芝居をありがとう!
今回が第30回公演というだけあって、完成度はきわめて高い。
このイプセンの「野鴨」はお勧めします! それにシアターXは座り心地もよく、観やすいですよ。
久しぶりの☆5つです。

脚本・演出・演技力、加えて言うなら舞台セットのセンスの良さ、どれも十分に満足できた完成度の高い芝居。
イプセンはいくつか原作も読んでいるが、120年以上も前の時代の社会通念としての家庭に鋭い矢を放った彼の戯曲が各劇場で上演拒否されたこともあったことは十分に頷ける。
確かに暗い。でも、今日においても彼の作品に触れるたびに十二分に考えさせてくれる。
劇団キンダースペース は今回が初見だったが、このコリッチでも物語の「あらすじ」をすべて書いている以上、自信作とは思っていたが、なるほど脚本は緻密で、無駄がない。
演出も自然体で心地よい。出演陣も見事にそれに応えている。
まさに三位一体の感があり、本当に満足できた。
キャストは一部ダブルキャストだが、私の観たBキャストの回では、うえだ峻さんは別格としても、特に、ヤルマールの妻を演じた小林元香さんの自然で目つきや些細な顔の表情で揺れ動く心を表わすような好演には本当に感動した。
グレーゲルスを演じた客演の白州本樹(スターダス・21)と、14歳のヘドヴィク役を演じた秋元麻衣子、ヤルマール役の田中修二、さらには医師役の仲上満ら団員組もみな熱演が光った。
シアターXの客席キャパをかなり減らしてまで、舞台を広くとり、セットにも気を配っていた点も見逃せない。
劇団キンダースペースの力量。しっかりインプットいたしました。

※メランコリックに浸ろうと思えばどこまでも浸れる流れで、演出家がとった方法は好みが別れるのだろうな……と思いました。
終盤の「ある音」には心臓が止まるかと思いました。本当に衝撃的でした。

※「観劇雑感」
構成的な舞台・セリフの刈り込み方に「プロ」の技を堪能させていただきました。明晰な舞台でした。
俳優陣のアンサンブルもとてもよかった。
コスパを考えれば、「オットーと呼ばれる日本人」<「野鴨」(いずれも演出家のセンスが光りました)


※言ってはいけない真実
時代に沿った洋風なセットといい、同じく衣装といい、完璧!秀作です。
イプセンの「野鴨」は知らない人はいないかと。ですから、感想しやすい。(^0^)

自らの生きてきた環境と、なくなった母の想いを抱えながら病んだ精神の持ち主ヴェルレ家の息子グレーゲルスは理想を追い求めるあまり、一つの秘密を抱えた家族を少しずつ、砂に水が染み込む様に確実に壊していく。
この壊していく過程で当の本人は自分が壊していると気付かず、あくまでもこの家族の嘘と欺瞞がもたらしたと解釈してしまうあたり、イプセンの得意とする分野です。
野生の習性をもった野鴨は敵や危害を加えようとする相手から逃れる為に、深い湖の底に沈み、うな底の草に銜えしがみついて、泥の中で死のうとする。
そんなうな底の野鴨に例えたセリフが何度も飛び交う。エクダル家の過去の過ちを正さなければ野鴨同様、淀んだ嘘の泥沼と化してしまうと考えたグレーゲルスは、ヤルマールに全てを暴露してしまう。ここでの野鴨は嘘と偽りの象徴であり汚れて死にそうな野鴨はエクダル家なのだった。
そのうな底に沈んだ野鴨を引き上げる役がここでの自分の正義だと考えて止まないグレーゲルスは正義という大儀の為に一つの家庭を壊して少女を自殺させてしまうに至らせる。ヴェレル家の家政婦で、次にヴェレルの妻となるセルビーがエクダル家の妻に吐くセリフ「どうか頭で考えるだけの事を大事になさらないように。」これが妙に納得するセリフ。全てのキャストが演技派で素晴らしいです。特にギーナ・エクダル(小林元香)の表情にヤラレル。絶妙です。
誰でもきっと、秘密の一つや二つはあるはず・・。嘘と欺瞞を暴くのも正義なら隠し通す事もまた正義。深層心理を追求した舞台!

※思わず感情移入したりして。
グレーゲルスが言葉を発する度に、何でわざわざそんなこと伝えるのよと、原作を知ってはいても憎たらしい思いになるのは役者さんの力量の大きさなのでしょうね。ギーナ役の古木杏子さんが気張らない自然体の演技でとても良かった。立ち姿も本当に綺麗でした。

※歌舞伎の花道のような通路が客席を貫いてしつらえてあって、その一番後方に「野鴨」がいる屋根裏部屋がある、という設定になっていて、「野鴨」を直接見せないのはその象徴的正確からして当然だけれど、存在を背後にまわすことで、その象徴性が個々の観客の「心の中」にあるかのような効果があがっているように思いました。



※キンダースペースの本公演「イプセン 野鴨」を見てきました。
特に、本公演を見た後にいつも感じることなのですが、
ずーっと舞台の映像がまぶたの裏にあり、
ずーっと考え続ける自分がいることに気がつきます。
今回も難しいお話だと思いましたが、
役者の皆さんが、とても丁寧に演じていて、
また、美術もお衣装も、かみ合っていて、
静かで、エネルギーのある舞台だったと思います。

理想と現実。真実と嘘。
理想を追い求め、その理想こそが真実と
一つの秘密を抱えた友人の家族を壊していく若者。
イプセンてばぁ・・・・・となじりたくなるような重たい結末。

現実の方に比重を感じ、知らなくてよいことは知らなくてもいいじゃん。
怖いものは、見ない。臭いものにはフタ!!
・・・・と思いがちな私は、大人になっちゃったんだとちょっと悲しくなるのだけれど
でも、人間は弱い生き物だから、そうやって幻の幸せの中でいきていくのかもしれない。
そんなふうに思いました。
正論ならば、何を言ってもいいのかというと、そうではない世の中の仕組みの複雑さ。
そういうものを生んでいるのも人間なんでしょうね。

「私達が作り上げ、これまで正しいと信じてきた家庭と個人のあり方を、
もう一度問い直すことを訴えているようにも思えるのです。」
と演出の原田氏は書いています。

家庭という最小単位の社会を問いただすということは、
そこから成り立つ、社会をも見直すことになるのだと思いました。

皆さん、お疲れさまでした。
毎回、今までで、一番いいかも!と思いながら見ています。
・・・・ということは、すごいことだと思います。
これからも楽しみにしてますね。