幕が開く……と言いますが、
その幕のない劇空間、いいですね。
ここと決めた席に着いて、腰を落ち着け、
おもむろに舞台の装置を見渡し、そのこしらえに見入りながら、静かに劇のはじまりを待つ。
その間のわくわくがなんともいえない。
自由席、というのも私にはうれしいし、シアターXの広さもうれしい。
あの客席と舞台の手に取るような近さが、これまたなんともいえない。
演ずるひとりひとりの声が、動きが生のまま目の前にある、というライブのきわみ、同じライブといっても、客席数百のホールではとても味わえないコトと思います。
ぜいたくな時間の中に居る、と思う。
ゆっくりとギーナが舞台に登場し、あれ、第一幕をすっとばして第二幕からはじまった、と思いきや、ヤルマール家の居間の前で第一幕がはじまるという意外性もたのしめた。
客席左の通路をふさぎ、舞台から傾斜をつけてのびた花道、どのように使われるのだろうと思っていたら、野鴨への道。
この装置の意外もたのしめた。
顔見知りの俳優さんたちが目の前で演ずる生の人間ドラマ。人間ドラマの不変性と普遍性に思いを馳せました。