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劇団キンダースペース 第23回公演【オレステス】

「人は何故、人を殺すのか。」   

私たちの“オレステス”は、ギリシャ悲劇のエレクトラとオレステスを底本としています。ここには、ふたつの世代による三つの殺人が描かれています。
 一つは、クリュタイメストラとエギストによる、アガメムノン殺し。一つは、オレステスとエレクトラによる、クリュタイメストラ殺し。もう一つは、同じエレクトラ、オレステス、ピュラデスによる、ヘレネとヘルミネオ殺しです。
 なぜ人は人を殺すのでしょうか。
 今、この原稿を書いている当時、タリバンがカンダハルを明け渡すというニュースが報道番組で流れました。実は、この芝居の装置は、美術家との打ち合わせで、アメリカ軍占領後のカンダハルをイメージさせる舞台にしたいとの意向を伝えたばかりでした。テロリストであるエレクトラとオレステスが囚われて、狂気の発作に耐えながら、強大な民主主義国家による裁定を待っている……。しかし、世界は先に進んでいます。この芝居の初日に、あの世界のなかの一つの国がどうなっているか、今この時点では知る由もありません。
 戦争という現場においても、個々の現場においても、殺人が劇的に有効なのは、それが他者の欲望と自己の欲望の成就の差異を決定的に思い知らせる手段だからです。もちろん、私たちがこの演劇で描けるものは、私たちがこの私たちの国にいて想像する個々の殺人の現場にすぎません。そこで私たちは、私たちの殺人としてこの現場を描きます。
                       

2002年1月30日(水)〜2月3日(日)

両国シアターX(カイ) 


計8ステージ

前売券  3800円 [当日券 4000円]
ペア券  7000円 
2回割引券 6000円
養成所券 2800円
学割券  2000円

STAFF
美術/朝倉摂 
 照明/久富豊樹 
 音響/熊野大輔
    田島 誠治(KOOL Stage) 
 衣裳/小池れい
 小道具/高津映画装飾M
 舞台監督/北条孝(ニケステージワークス) 
宣伝美術/桜井史人
 印刷/時の美術社
 協力/キンダースペース友の会 キンダースペースワークユニット
The 30's スターダス・21

CAST

Ω(オメガ)

Σ(シグマ)

オレステス

根本博成 (スーパービジョン)

岡野暢 (フリー)

エレクトラ

古木杏子

クリュタイメストラ

瀬田ひろ美

アイギスト

樋渡宏嗣
(アクターズ・エージェンシー)

泉龍太

ヘルミオネ

小林元香

ピュラデス

村信保

吉田利成 (スターダス・21)

クリソテミス

白沢靖子

コロス

杉山美穂子 (劇団NLT)

コロス

橋本亜由子

コロス

荒井麻理 (おふいす佐野)

教僕

うえだ峻 (フリー)

兵士

平野雄一郎

兵士

仲上満

兵士

森直樹 (スターダス・21)

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上演にあたって

パンフレットより

 人は何故、人を殺すのでしょうか? 憎しみによって、怒りによって、愛によって、友情によって、欲望によって、思想によって、衝動によって、妄想によって、法によって、正義の為、仲間の為、偶然に。その対象も他人ばかりでなく、時には自らを殺害する事もあります。
 ではなぜ、人は人を殺さないのでしょうか? 倫理によって、憐憫によって、禁忌によって、法によって、信仰によって、愛によって、本能によって、恐怖によって、罪によって、罰によって。そういうものがあって人が人を殺さないのだとしたら、逆にそういうものから自由になるための殺人という転倒した動機も考えられます。
 親鸞という僧の思想を記述した「歎異抄」に『わがこころのよくてころさぬにはあらじ』という一節があるのですが、ギリシャ悲劇と向き合う時は必ずこの言葉を思い出します。人間が人間を殺さないのは善や悪の決めるところではなく、一人でも殺す業縁を持たないものは一人も殺さず、たとえ殺すまいと思っていても百人千人を殺すこともある、というのがこの論の骨子ですが、ここには人という存在の本質を見つめようとする思考があるような気がします。
 人は誰でも、間接であれ直接であれ人を殺します。殺人に対して働くブレーキは、我々が思っているほど確かなものではありません。それはつまり、社会という我々が作り上げたシステムの維持に必要だったために出来た共通原理であり、神も倫理も法も、本質よりもはるか後に我々に植え込まれたものであるからです。
 ギリシャ悲劇が今日でもすぐれた演劇であるのは、人物の造形においてこのことに対するはっきりした認識があるからに他なりません。この世界では人間の本質的な存在が社会の通念に先行しています。これと向き合う時、私たちは先ず私たちの思考や、共通だと考えていた認識がいとも簡単に崩れ去っていくさまを目のあたりにしなくてはなりません。ちょうど全世界の人口からすれば、はるかに少ない数のテロリストによって、我々の日常が崩されていくように。

原田一樹

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『オレステス』解説・物語

 今回の『オレステス』はギリシャ悲劇の「エレクトラ」と「オレステス」を底本としています。これらはともにアルゴスのアトレウス王家一族の系譜の上に描かれた作品で、アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスというギリシャの三大詩人の手によって様々に変容されています。また、ドイツの詩人ホフマンスタールや、サルトル、ユージン・オニール等による戯曲もあり、それらのテキストも一部参照、翻案させて頂きました。今回の物語は、主にソフォクレス、エウリピデスに依るものです。

 承前:ペロポネソスの王が死ぬと、その息子アトレウスとテュエステスは王権を巡って争い、結局アトレウスが王位についてテュエステスを国外へ追放する。その後彼は弟と和解すると称して宴に招き、その子供たちをひそかに殺して料理し食わせる。ただ一人、幼いアイギストだけは殺されずに残るが、テュエステスは自分の食べさせられた料理が何であるかに気付いて、この子孫たちを呪う。その後アトレウスが死んで、王国はアガメムノンとメネラオスに分割される。ところがメネラオスの妃ヘレネがトロイアに誘拐されるという事件が起こり、その奪回の為、アガメムノンを総大将としてトロイアへの遠征を行なうことになる。遠征軍は港に集結したが嵐の為出航できない。預言者の言葉で、娘を犠牲に捧げないかぎり嵐は鎮まらないと知ったアガメムノンは、長女イフゲネイアを虚偽の理由で呼び寄せ生贄として海に投げ入れ、ようやく遠征軍は出発し、十年の後トロイアを陥落し帰途に就く。その留守中にアガメムノンの妃クリュタイメストラは夫への不信からアイギストと共謀、帰国したアガメムノンを浴室で殺害する。

 第一幕:クリュタイメストラにはイフゲネイアの他にエレクトラという娘とオレステスという息子がいた。オレステスは母親の犯罪の後すぐに何ものかの手によってアルゴスから連れ出され、どこかで暮らしている。残されたエレクトラは母親の罪を知り、亡き父への思慕から、ひたすらに母への憎しみを増加させオレステスを待ち続ける、が、そこにオレステスが異国の地で客死したという報せを持った老人が訪れる。今回の『オレステス』では、これは、エレクトラが繰り返し見続ける夢でもある。
 第二幕:オレステスの客死の報せは、実は仇を討ちにきたオレステスと友人ピュラデスがある老人に授けられた策略であった。アルゴスに潜入した二人だが、オレステスはこの地に来て自分の動機に疑いを抱く。それはエレクトラの知ることとなり、エレクトラはオレステスを否定しこの地を去れと叱責する。オレステスはしかし、憎悪にも義務にも依らない方法で行為することを決め、アイギストと母親を殺害する。
 第三幕:してしまったことの悪夢から目覚めたオレステスは監禁されている。エレクトラもまた監視下におかれ、アルゴスは今、アガメムノンの弟、メネラオスを迎え市民たちと法の支配する国家となっている。罪により捕らえられた二人は、市民たちによる死刑の裁定を待っている。

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 アンケートより

第23回公演「オレステス」アンケートより

■2002年1月31日、私63才ではじめて演劇を観ました。映画は大好きで、いつも見ていますが、演劇は場所が遠いので観る機会がありませんでしたし、それ程観たいとも思いませんでした。今回初めて観て、とても良かったと思いました。
 ギリシャ悲劇「オレステス」 妻が夫を殺し、子供が母を殺す。今もなくならない殺人。理由はいろいろですが人間から殺人はなくならないものと思います。生命のある限り永遠に続くものと思いますが、オレステスが姉に「オレステス」と告げる場面と、母を殺した後、ベッドで目覚める場面が良かった。何故か涙があふれて止まりませんでした。皆さんの一生懸命演じる姿に感激しました。ありがとうございました。[男性 63才]

■ラストシーンの砂が印象に残りました。「人を憎んだこともない人間に人を愛することなんて出来ない」このセリフが響きました。[男性 インテリアデザイナー」

■ひきつけられた。自分と自分のなかで信じようとしている運命の中にがんじがらめにされているエレクトラから、一見無力なオレステスが「自由に目がくらみ」殺人へと駆り立てられてゆくバトンタッチの瞬間が素晴らしかった。[男性 作家]

■ものすげえ面白かったです。物語の中にぐいぐい引き込まれました。うちのめされた気分です。エレクトラが素晴らしかった。[男性]

■「かくて賢者は傍観す」と、ある小説の一文にあります。殺人も戦争も行為のみが記録や記憶に残り、価値観とは一様じゃないなあと劇中思いました。パンフレットにかの「テロ」について述べられていましたが、その影響かもしれません。世の中には絶対的第三者などいない訳で…。[男性]

■何故人を殺さないのかと問われれば「殺されたくないから」としか答えられません。[女性]

■私は芝居の他にもオペラが好きで、R・シュトラウスのオペラ「エレクトラ」やヘンデルのオペラ「オレスト」は大好きな作品です。今日の芝居は原作が同じギリシャ悲劇だったので興味があり来ました。シュトラウスやヘンデルのオペラと視点が違う面があり、また新たな発見があり、大変楽しむことが出来ました。とりわけエレクトラの方の熱演が印象に残りました。地方都市に住んでいる者にとっては芝居の舞台に接する機会が少ないので、今日のような上演はぜひシアターTVのようなCSでも放送してほしいです。[男性 会社員]

■砂が効果的だった。踏みしめる音は登場人物の感情まで表現しているようだった。視覚的に荒涼としたイメージになるのは、観る側の思い込みか???[男性]

■舞台セット、美術、照明が素晴らしかった。風格と哲学を感じさせるお芝居でとても奥深さがありました。まさに現代とは違う古代のムードが劇場全体を支配していました。[男性 自由業]

■「憎しみをもった人にしか人を愛することは出来ない」というようなセリフが胸に残りました。面白かった。ただ、オレステスが自分が何者なのかも、憎しみも感じなかったのに、何故殺すということに至ったのか…。もう一度考えたい。[女優]

■終わって拍手しているうちに泣けてきた。エレクトラとクリュタイメストラがかわいそうで…[男性 文筆業]

■むづかしかった。しかし、目が離せなかった。チラシをまるめて握りしめていた。[男性 教員]

■新聞を見て、面白半分で応募した次第、幸い、お招きを頂き、思案しつつ両国まで参りました。一言、感動いたしました。何処に? 総てにと申し上げます。只々嬉しく、欣喜雀躍、手の舞、足の踏も所を知らず、歩行若干困難、ビッコの足が痛みを忘れて歩いて呉れました。鼻歌など歌いつつ、横浜へ帰って参りました。直行しましたが20時を回っておりました。
 正に完璧でした。原田氏の演出ベターと存じました。演ずる方々の真摯ストレートに伝はりました。重ねてお礼申し上げます。皆々様の益々の御精進お祈り申し上げます。
 追伸 会費同封しました。後援会のお仲間の端にお加えくださいませ。僅少ながら残余は稽古の後でせんべいでもかじって下さらば幸。あ、忘れました。入場の際の受付の方の接客態度も100点満点でした。生きてましたら12月24回公演を是非観たいと念じて居ります。[男性 79才]