家があった。
通称、魚町の気象館と呼ばれる黒い旗の立つ家。
その家に、生まれてからずっと住み続けている姉娘がいる。
その隣にはこれまた40年間、この家に住み続けている男が営む星野洋服店が建っている。
最近姉娘から、東京で女優をする妹娘に奇妙な手紙が来るようになった。
「近頃時々部屋をのぞかれて困っている。遂にはエスカレートして…」
誰が、いつ覗いていたのか?
真実は目の前にしないと分からない。しかし、一端引きずり出してしまえばもう取り返しが付かない。
受け入れられなかったら、また目の前から遠ざけてしまえばいい…壁を立てて。
しかしそれで終わりに出来るのか。
動き出したことは悪かったのだろうか。
断片の行き交う中に私たちはどんな真実を求めるているのか…。
清水邦夫氏が1981年に表した作品が現代に新たな輝きをもって 存在するのを感じます。
【演出:深町麻子】
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