キンダースペース演劇ワークショップ2021

 

 「演劇」が、私たちに示してくれるものの一つは、私たちが普段、当たり前に「在る」ものとして考えている「関係」や「繋がり」、その集積である「社会」や「世界」の姿を、あらためて、この手に触れられるものとして私たちに示してくれる、ということです。

 「演劇」は「稽古」を必要とします。連続ワークショップの場合は、古今東西の戯曲より抜粋したシーンの「台詞」のやり取りを何度も繰り返し、一つの「世界」を創り上げ、モノドラマの場合は文学者の「文章」を、設定された舞台装置の中で何度も語り、「文学」を「俳優」の内面から発生するものにしていきます。

 その稽古の時間が私たちに与えてくれるのは「言葉」の底にある「何か」に触れる感覚です。全ての「表現」は、ここから生まれます。そうでないものは私たちの心を動かしません。

 一方で、私たちは今、モノも情報も言葉も目まぐるしく消費されていく渦の中に暮らしています。そこでは「心を動かす」かどうかよりも「嘘か本当か」が問題にされます。それも「真偽」ではありません。自分に都合がいいかどうかが問われるだけです。「文学」や「演劇」の「感動」は、これとは根本から種類を異にするものです。

 モノドラマで扱うのは、主に明治大正から戦前までの「文学」です。もちろん、古いことに意味があるのではありません。この時代の作家たちが、一つの言葉、一つの文章にかけた時間を、もう一度「生きる」こと、消費の渦の中で立ち止まり、一つの「言葉」を発する感触に耳を澄ますことに意味があります。

 連続ワークショップで扱う戯曲では、さらに時間をさかのぼることがあります。シェークスピアの主人公たちの言葉は、私たちに「自分」というものがどれだけ不確かなものかを体感させます。ギリシャ悲劇は、私たちがいかに「感情」や「欲」に弱いのかを思い知らせ、イプセン、チェーホフらの近代劇の台詞は、私たちがいかに理想と隔たっているのかを実感させます。

 もちろん「演劇」は、「答え」を示してくれはしません。問いかけを続ける姿が示されているだけです。それはおそらく、私たちの「生きがい」や「喜び」もこの「問いかけ」のなかにこそあるからです。

 連続ワークショップ、モノドラマワークショップの時間は、この「問いかけ」を「私たちの言葉」にする時間だと考えています。

 

 

連続ワークショップ vol.61 
「女と男」「生者と死者」

連続ワークショップは、東西古今の様々な戯曲からテーマに沿って、演出家が選んだ一場面をテキストとし、一応の本読みの後、参加者が「やってみたい役」を選定、短い場面を作り上げます。ここでまず感じることは、「台詞」というものが、ただ「言いたいこと」を口にするのではないということです。私たちは普段「言いたいこと」を口にして生きていません。それどころか時には、私に「言いたいこと」などあるのだろうか? という疑念にも囚われます。この時に「演劇」が動き出します。「演劇」は「台詞」ではなく、「存在」に降りていくものだからです。なおここで言う「生者」も「死者」も生きている者、死んだ者という意味だけではありません。例えば動く者と止まっている者。前を向くものと、過去にとらわれる者、等の意味も含みます。

※コロナ禍での開催のため、昨年よりこの連続ワークショップは「リーディング」の形を取らせていただいております。ビニールシートで区切られたエリアに演者は一人ずつ立ち、台本を持ちながら戯曲のワンシーンを演じます。相手役は劇団員が務めます。

8/24(火)・25(水)・27(金)・28(土)・31(火)・9/1(水)・3(金)・4(土)

 

各回、キンダースペースが現在、地域や学校で行っているワークショップやエクササイズなども紹介し、進行します。

募集は各回ごと。一年、あるいは複数回の演技経験者が対象です。

 

時間/19:00~22:00

費用/24,000円

定員/モノドラマワークショップ:8名 連続ワークショップ:12名


申し込み方法

 

post@kinder-space.com 宛

●氏名 ●年齢 ●職業・所属 ●住所 ●電話 ●FAX ●メールアドレス

をお伝えください。※定員になり次第締め切りますのでお早めにお申し込みください。


※劇団の事情により日程や条件が変更になる場合、応募者には早めにご連絡いたします。ご了承ください。


★ワークショップ2020までのアーカイブはこちらをご覧ください。


 

モノドラマワークショップ 2021  I(終了しました)

キンダースペースではこれまで20150本近くの「モノドラマ」を公演してまいりました。これは「一人芝居」とも「朗読」とも違います。「俳優」がただ一人舞台に立ち、創り上げるドラマです。ドラマとは時間の推移と空間での関係の変化によって組み立てられるものです。そこに登場する様々な人物、語り手あるいは作者自身を演じて、観客を「ここ」ではない「遠く」まで運んでいくことです。これは文学そのものの身体的経験であり、また「俳優」による、独自な「表現」です。

4/13(火)・14(水)・16(金)・17(土)・20(火)・21(水)・23(金)・24(土)

 

モノドラマワークショップ 2021  II(終了しました)

コロナ禍での緊急事態宣言が続く中、演劇のスタイルも非接触型を求められています。もちろんこれは一時的な退避形態です。が、このような障壁も、時には「演劇」の、新しい可能性に気づかせてくれます。舞台にはビニールで仕切られた二つの空間。題材とするのはこれまでキンダースペースが取り組んできた近代文学アンソロジーの場面。「語り手」と「登場人物」が共存する文学の世界です。モノドラマワークショップが例年、早い時期に定員となってしまうので、いくつかの「モノドラマ」作品も織り交ぜ、新しい「表現」の形を探ります。

5/28(金)・29(土)・6/1(火)・2(水)・4(金)・5(土)・8(火)・9(水)

 


新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、密にならないよう工夫をしながら開催いたします。
・スタッフは常時マスク着用、検温・手指消毒を徹底します。
・アトリエ内の用具、手すり、蛇口などの消毒、定期的な換気をいたします。
・必要に応じて演者と見学者の間、演者と演者の間にビニールシートを設置いたします。
・参加者の皆様にはマスクの着用、体温測定、手指消毒、ソーシャルディスタンスの確保のご協力をいただきます。何卒よろしくお願いいたします。
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